高槻成紀
私はシカと植生との関係を調査してきましたが、同時にシカの食性分析を行ってきました。これまでの調査により北日本ではシカは冬に主にササなどのイネ科を食べるが、南日本では広葉樹の葉や果実をよく食べるという傾向があることがわかってきました(図1)。
図1. シカの食性におけるイネ科の割合(%)の南北比較(高槻ほか, 2023より)。
この地図にプロットするには、シカが低密度である必要があります。というのは、シカが急激に増加して植生が著しく貧弱になった場合は、その場所本来のシカ食性と著しく離れたものになっている可能性が大きいからです。そのため、この分布図には取り込めません。これまで神奈川県の丹沢(高槻・梶谷, 2019)、山梨県の早川町(高槻・大西, 2021)、鳥取県の若桜(高槻・永松, 2021)などはそのような例で、この分布図には入れることができませんでした。最近分析した福岡県(高槻ほか, 2024)と宮崎県(高槻・片山, 2024)も同様でしたが、現在行なっている大隅半島の高隈山ではアオキ主体の常緑広葉樹が多くを占めました。
つまり、この地図に取り込むには、シカが低密度であることが条件になりますが、その場合は、糞の発見が困難なことがあります。そこで、本会の会員の広がりを考えると、糞のサンプリングが可能な方もおられると思い連絡することにしました。
皆様の調査地がまだシカの影響がさほど高くない場合、シカの糞をサンプリングしていただければ、共同研究として分析をお引き受けいたします。ご自分の調査地がこれに該当すると思われ、調査地のシカの食性に関心がおありの方は、ご一報ください。サンプリングのプロトコルをお送りします。
高槻成紀 takatuki@azabu-u.ac.jp
文献
- 高槻成紀・阿部隼人・片山歩美. 2024. 九州北部の低山地におけるニホンジカの食性. 哺乳類科学, 65: 1-8. https://www.jstage.jst.go.jp/article/mammalianscience/65/1/65_1/_article/-char/ja
- 高槻成紀・梶谷敏夫. 2019. 丹沢山地のシカの食性 − 長期的に強い採食圧を受けた生息地の事例. 保全生態学研究, 24: 209-220. https://doi.org/10.18960/hozen.1903
- 高槻成紀・片山歩美. 2024. 宮崎県椎葉村の九州大学宮崎演習林におけるシカの食性. 保全生態学研究. https://doi.org/10.18960/hozen.2334
- 高槻成紀・永松 大. 2021. スギ人工林が卓越する場所でのニホンジカの食性と林床植生への影響: 鳥取県若桜町での事例. 保全生態学研究, 26 : 323-331. https://www.jstage.jst.go.jp/article/hozen/26/2/26_2042/_article/-char/ja/
- 高槻成紀・大西信正. 2021. 山梨県早川町のシカの食性 − 過疎化した山村での事例 −. 保全生態学研究, 26: 149-155. https://doi.org/10.18960/hozen.2020
- 高槻成紀・田村典子・中下留美子. 2023. 群集の中の哺乳類. 「日本の哺乳類学 百年のあゆみ」日本哺乳類学会編, pp. 292-316, 文永堂出版

